レッスンはアフターで

「ほら、」


コトンという音と共に俯いていた顔をあげれば、目の前に温かい珈琲。ご丁寧にも、砂糖とミルクまで一緒に置いてある。


柚木も珈琲を手に向かい側に座った。


「ありがとう」


お礼くらいはちゃんと言える。強気に出ても、どこか落ち着かない。


「いや、これもそれも貴女の奢りですから」


「わかった」


ふぅーと大きな息を吐き出す柚木も、戸惑っているのが見て取れる。


生憎、言い返す気力はゼロで、思考停止したまま、珈琲にミルクを入れて、必要以上にかき混ぜている。


柚木に視線を合わせても何食わぬ顔で珈琲を飲まれては、声をかけられない。何か聞いてきたら答えるのに、聞かれない。それゆえ、自分から言うのは、気が引けて沈黙だけが続いていた。


「愛奈ちゃん!」


ドタドタと足音を響かせて、順一さんが来るまでずっと。


「大丈夫?綾香も呼んだからもうすぐ来るよ」



「ゴメン、順一さん。また、迷惑かけちゃった」