「二次元のちんこ大きくするくらいなら、三次元のちんこいじりたいってのっ!!!」
あたしは一人叫びながら、怒りに任せてキーボードが壊れるくらいの勢いで、コマンドと+キーを連打する。
画面いっぱいに広がったモザイク処理前の局部の画像に、自分が情けなくて無性に泣きたくなった。
……もうやだ。おうちに帰りたい。
そう思って両手で顔を覆うと、ガサガサの荒れた掌が頬にあたって痛かった。
まるでおばあちゃんみたいな手のひら。
潤いが足りない。
こんな手、女失格だなぁ。
ぐずっ、と鼻をすすって顔を上げると、傾いたマッシュルームみたいなふざけた髪形の眼鏡男が、あたしの事を見下ろしていた。
オレンジ色のダッフルコートにストライプのマフラー。
そんな派手な服装に、太いフレームの眼鏡と茶色のマッシュルームカットがむかつくほど似合ってて、なんかイラっとする。
「……なんの用よ?」
さっきさっさと逃げ出したくせに、なんでまた戻って来てんのよ。
まさか今泣いてるところ見られた? っていうか、さっき三次元のちんこいじりたいとか叫んでたの聞かれた?
気恥ずかしさに思いっきり不機嫌な顔で高橋を睨むと、
「スマホ忘れただけです」
相変わらず可愛げの無い仏頂面でそう言って、手の中のスマホを振って見せる。


