むかつくむかつくむかつくー!!!
先輩を差し置いて一人でさっさと帰りやがって!
後であいつのマウスに両面テープつけて動かなくしてやる!
引き出しの中のお菓子勝手に食べてやる!
一人残されたフロアで一頻り叫び喉が疲れてきた頃、さすがにバカバカしくなって仕方なく封筒を開いた。
色校のゲラに入った赤字をチェックして、肺がからっぽになりそうなくらい大きなため息をつく。
本気で入ってるよ。ちんこ大きくしてくださいって指示。
なんなの一体。
なんであたしがこんな仕事をしないといけないのよ。
まだ学生だった頃に描いた青写真には、一流企業に入社して乙女が心ときめくような素敵な商品パッケージをびしばしデザインする自分がいたはずなのに。
成績もセンスも人並みのあたしにそんな素敵な未来が待っているはずもなく、しがみつくようにしてもぎ取った就職先は、生活感溢れるスーパーのちらしの作成や、地方自治体の広報からこういったマニア向けのムック本のDTPまで、とりあえず頼まれた物はなんでもやる下請けの小さな会社だ。
あたしってこんな仕事するために、親に仕送り頼んでまでデザイン学科のある大学に行ったんだっけ?
毎日日付が変わるまで残業して、ロクに料理をする暇もないからコンビニの弁当ばっかり食べて。
会社員の彼氏には、「お前のだらしない生活についていけない」とか言われて。
挙句の果てに「お前は仕事さえやってりゃ、彼氏なんかいなくても満足なんだろ」とか言ってフラれて。
そんなみじめな状況で、なんであたし画像のちんこを大きくする仕事なんてしてんの?


