「厚かましすぎてゾッとしますね」
「うるさいなぁ。ほら、高橋はあたしに借りがあるんだから、さっさと画像の修正やってよ」
さっき電源を落としたばかりの高橋のマックを、さっさと立ち上げろと指をさして睨む。
すると高橋が近づいてきて、マックを指さすあたしの手に触れた。
「な……っ!」
何、急に人の手を握ってんのよ!
なんなのこいつ?
やだ、もしかしてあたしの事口説こうとしてんの?
困ったな、あたし年下の男なんて趣味じゃないんだけど。
握られた手を振り払うのもナイーブな新人を傷つけてしまうし、だからといって握り返して変に勘違いされても困るし、どうしていいのか分からずに固まっていると、
「戸田さん、手ガッサガサですね。紙やすりみたい」
無断で人の手に触り無言であたしの手のひらを見つめていた高橋が、ぼそりとそう言った。
「はぁ? ちょっと何失礼な事言ってんのよ!」
勝手に乙女の手を握った挙句、人の手を紙やすりみたいだなんて、デリカシーが無さすぎる!
一体なんなのこの男は!
乱暴に高橋の手を振り払い、自分の両手を胸の前でぎゅっと握りしめると、目の前にばさりと封筒が落ちてきた。
「じゃ、これ急ぎの口絵なんで」
条件反射で封筒を受け止めたあたしに背を向けて、小洒落たダッフルコート片手にさっさと出て行く高橋。
ちょっと待ってよ、と声をかける間もなく、奴はフロアから逃げ出した。


