「あーもう、わかった。じゃあ画像の修正だけでいいからお願い」
「いやです」
「なんでよ」
こっちが下手に出て頼んでるっつうのに、またも表情筋を使う事なく断る新人。
せめて少しくらい申し訳ない顔しろっつの。
「俺もう退勤クリックしましたもん」
「ちょっとくらいいいじゃん」
「俺、戸田さんの為にサービス残業してあげる筋合いないんで」
情の薄い現代っ子め。
同じ会社で働いてるんだもん、先輩が困ってる時に助けるのは当然でしょうよー!
「あ。手伝う筋合いならあるよ。あたし高橋からホワイトデー貰ってないもん」
「は?」
あたしが思いついてそう言うと、まったく心当たりがないのか、いつもは無表情な高橋が困惑したように眉をひそめた。
「バレンタインにチョコあげたのに、お返しもらってないよ」
「いや、戸田さんから何かもらった記憶なんてないんですけど」
「休憩室に大袋のキットカット置いておいたじゃん。あれ高橋も食べたでしょ?」
「あれがバレンタインのチョコですか? 社長がパチンコで取って来たのかと思ってましたよ」
「あたしちゃんと付箋に『お返しちょうだいね(はぁと)』って書いて袋に貼っておいたからね」
「まさか戸田さん、300円弱の大袋のお菓子で、男性社員全員からお返しを搾り取ろうと思ってるんですか?」
汚い物でも見るような目をこちらに向ける高橋に、あたしは胸を張って頷く。


