「あんた新人のくせに本当に可愛くないよね」
「新人が可愛くなかったら、何か問題でもあるんですか?」
「新入社員は可愛いもんだって法律で決まってんのよ」

この年下の男の何が可愛くないって、あたしが無茶苦茶な事を言っても表情一つ変えないところだ。
あたしの暴言に慌てた表情でも見せるなら、こっちだって可愛がってあげようと思えるのに。

「へぇ、法律ですか」

抑揚のない声でそう言った高橋が、あたしの事を見て首を傾げる。

「じゃあ、戸田さんも入社したての頃は可愛かったんですか?」
「そりゃ可愛いに決まってるじゃん」
「そうですか。その頃はまだ可愛かったんですね。その可愛げのあった戸田さんが見られなくてとても残念です」

丁寧な口調にあからさまな皮肉を込めてそう言う高橋にむっとして、あたしの眉間に深いシワがよった。

「あんたと話してるとなんかイラっとするわ」
「奇遇ですね、俺もです」

むかつく小僧め……!

無表情のままさらりとそう返す高橋に、額の血管が浮き出るのを感じたけど、これ以上不毛な言い合いをしたって仕方がない。
さっさと仕事を終わらせて帰ろう。
大人なあたしはそう思い、年下の新人にこちらが折れてお願いをする。