おい、元カノが置いてった物を人にプレゼントするんじゃねーよ。
お前にはデリカシーってもんがないのかよ。
「でも使いかけじゃないですよ。買ったままのやつが車に転がってたから、大袋のキットカットのお返しにと思って。別にいらないなら捨ててください」
「いや、未使用っていうなら、もったいないから一応もらっておくけど……」
元カノの忘れ物ってのはひっかかるけど、せっかく高橋があたしのために車から持ってきてくれたっていうんなら、仕方がないからもらってあげよう。
そう思いながら可愛らしいピンク色のチューブを手の中で遊ばせていると、高橋が笑ってるのか怒ってるのかもよくわからない、細い一重であたしを見下ろしながら口を開いた。
「戸田さん、三次元のちんこいじりたいとか叫ぶ前に、ちゃんとハンドクリームくらい塗って、その手荒れどうにかした方がいいですよ」
「…………っ!」
このヤロウ。
さっきあたしが一人で叫んでたの、しっかり聞いてたのかよ!
最悪だ! 恥ずかしすぎる!
聞いてたなら聞いてたって最初に言えよ、このヤロウ!
羞恥のあまりカッと血が上って、頬も耳も頭部の毛穴まで一気に熱くなった。
あの叫びが聞かれてたって事は、おうちに帰りたいってべそかいて鼻をすすってたのも見られてたのか。
よりによってこの生意気で可愛げのない年下の男に!


