きつく拳を握って爆発しそうになる怒りをこらえていると、コマンドとSのキーを音をたてて押した高橋が、明るいオレンジ色のダッフルコートのポケットから何か細長いものをこつんとあたしのデスクに置いた。
「戸田さん、これあげます」
「は? どしたの、これ」
「ハンドクリームでも塗って、そのガッサガサの手のひらどうにかした方がいいですよ」
小さめの薄いピンクのチューブに、ダイヤモンドのようにカットされたデザインのキラキラの銀色のキャップ。
見るだけで乙女心を上げさせるような可愛いパッケージの、某ブランドのハンドクリーム。
「え? あ、ありがとう……」
突然のプレゼントに驚きながら、銀色のキャップを外し手のひらにそっと伸ばしてみる。
ふわりと香った上品な甘い花の香り。
こいつ、わざわざあたしの為にこんなに可愛いプレゼント買って用意してくれたの?
やっぱり本当はあたしの事好きなんじゃ。だからいつも可愛くない事言ってあたしにつっかかってきたりしてるんじゃないの?
今までふざけたマッシュルームカットも小洒落た服装もなんか鼻について苦手だったけど、こいつよく見たら結構かっこいいかも。
一重で性格悪そうな顔してるけど、その派手な眼鏡外して普通の髪形にしたら、実は整った顔してるかも。
「あ、勘違いしないでくださいね。それ元カノが車の中に忘れていったやつで、戸田さんの為に買ったんじゃないですから」
「…………」


