「ハアッハアハア…。」



しばらく走って近所の公園の椅子に座った。
夏と言っても、夜に1人は怖い。



「はあ…。」



ため息をついたら、涙が溢れてきた。




これからどうすればいいんだろう。




そんな想いが胸中を満たした。



「葉月?」




私を呼ぶ声がそばで聞こえた。
慌てて涙を拭い振り向くと、そこには目を丸くした海斗がいた。



「なんで…!」



「サッカーの帰り。どうした?」




海斗は幼稚園生の時からサッカーをしていた。



「お父さんと喧嘩して、家飛び出してきた」



「ふーん。やっと言い返せたんだ。やったじゃん」


そう呟いて私の横に座った。



堪えてたのに、いつの間にか私の目からポロポロと涙が落ちてきた。



「うっ、ひっ…。」



何が悲しいのか自分でもわからなかった。
だけど、涙が止まらなかった。



すると、私の手を海斗がギュッと握った。
困ったように眉毛を下げていつもは出さないような優しい声で言った。



「泣くなよ。お前らしくねえなあ。
大丈夫だって。お前のことは俺が守ってやっから」



「どうやって…?」



しゃくりをあげながら呟いた。



「辛くなったら俺を呼べ。すぐに行って助けてやる」


そう言って真夏の太陽のように笑う海斗を見て。



不思議と涙が止まったんだ。


まるで魔法にかかったように。