ガタッ


気づけば私はドアを開けていた。


ドアノブを手にしたまま私は立ち尽くしていた。


目の前には予想通り、海斗と担任、サッカー部の顧問である咲坂先生。


「どういうこと…?」


「何でいんだよ」


動揺した顔を2人で見合わせる。


「そんなことどうでもいいでしょ!
どういうこと?転校って‼︎」


「ごめん。
親父の転勤が急に決まって。
文化祭の日が引っ越しなんだ。」


「何で…
何で言わないの?
私にはそんなことも言えないわけ?
そんな存在だったの?」


涙が出ないように無表情で問った。


「ごめん…」


「ごめんじゃないし
1人で溜め込んで!
舞友は?どうすんの?
幸せになるって言ったじゃんか!」


「昨日、何にも言わないでフった」


「はっ⁉︎
何やってんの!
舞友がどれだけ傷つくかわかってんの!」


「うるっせえんだよ‼︎
俺だって好きで転校するわけねえだろ!
ずっと舞友とも、お前とも、サッカー部のメンバーとも、クラスのダチとも居てえよ‼︎
だけど、俺の勝手でどうこうできる問題じゃねえんだよ‼︎」


「黙って…いくの?
誰にも言わないでたった一人でこの街を離れんの?」


「みんなが文化祭を楽しみにしてんだ。
俺がそれをぶち壊していいはずない。
これが1番いいんだよ!」


「なんで…。
みんなあんたの事信じてんのに。」


「すまなかったって言っとけ。お前はもう戻れ」


「…」



「…このドアホッ」


そう言い捨てて私は部屋を後にした。


「うううっ〜〜っ‼︎どうすれば…いいのよお…。」


ポロポロと涙が零れ落ちてきた。
自分の無力さが悔しくて。


だって、私は海斗を正当な理由で叱りつけることも。
抱きしめて溜めてたものを発散させてあげることも。
何が1番いい道か考えることも。


何も出来ないから。