「気をつけい!れい!」
『さようならー!』

教室に元気な声がひびきわたる。

「ゆうちゃん!今日、一緒に遊ばない⁈ドッチボールするよ!」

ドッチボールはだいすきだった。
よく、お母さんと練習もした。
でも今日だけは…

「ごめんね!今日は早くかえらなきゃ!」

そう断って、勢いよく家まではしる。
右手には、不器用ながらも、ていねいに結ばれた赤いリボンがついた白い丸められた紙を握って。

「これを見せたら、お母さんよろこぶかなぁ」

そんな淡い期待もこめて。

「おかーさん!ただいまー!」
「…」

いつもなら、元気なただいまが聞こえるはずが、今日は聞こえない。

もしかして、トイレかな?
あ、それとも寝てるとか?

「おかーさん、かえった…」

……え……

右手からお母さんに渡すはずのプレゼントがボトリと落ちる。

おかあさん…?

目の前には変わり果てたお母さんが天井からぶらさがっていた。

なに?
いま、なにがおきてるの?
おかあさんは、どうしたの?
どうして、おかあさんは天井からぶらさがってるの?

「お、かぁ…」

おかあさんの手をとってみると、ヒンヤリと、いつもの温もりはなかった。