ミーンミーンミーン
それゎまだ蝉がなる真夏の日だった。

買ってだいぶたつ赤いランドセルをしょった少女が、勢いよく走っていた。

年期の入った古いドアを開け、
元気よく

「おかーさん!ただいまー!」
「ゆうー!おかえりー!」

元気な声で迎えてくれるお母さん。
そんなお母さんがだいすきだった。

お父さんは私が物心がつく頃にはもういなかった。
なぜいないのかは、お母さんは教えてはくれなかった。

でも私にはお母さんがいれば十分だった。

とっても幸せだった。

この頃の私は、あんなことが起こるなんて知る余地もなかった…