ハッとして振り返れば、薄桃色の傘を拾ってくれている廣木君がいた。 その心配げな顔は、縋りたくなるくらい優しく、温かいものだった。 「廣木、君…」 「なに、やってんだよ」 「…」 「こんな雨降ってんのに、傘も差さずに何やってんだよ」 「…」 「なぁ、」 「…」 「何とか言えよ…」 今日、風邪で学校を休んだのにも関わらず、雨に打たれるわたしは廣木君からしてみれば、ワケわからないだろう。