「広重、いっぱいお客さん連れてきてくれたんだね(笑)」
「みんな俺の知り合いなんだ。」
「へ~っ。」

ニコニコしながら歩く彼ら。珍しい光景に、凛香は驚きを隠せないでいた。

「到着です!お足元に置きおつけくださいね。」

椿達の視線に入ってきた一軒のかやぶき屋根の家。そこに“甘味処 鬼灯屋”と墨で書かれた看板が掲げられている。

ガラガラと音を立てて、少し動きにくい扉を開ける弥勒。そして、椿達を店の中に案内した。

「うわ~。」
「懐かしい雰囲気のする店じゃな。」

そういいながら椿と凛香が席に座る。しかし、遊佐と砂靭は席に座ろうとしない。


「どうして座らないのですか?」


椿がそう尋ねると、砂靭は「そんな、奥方様の横に座るなんておこがましいこと、俺達にできないですよ。」と言って焦りだす。それを聞いた凛香と広重は、顔を見合わせるなり大爆笑。そして「何を言っておる(笑)」と言って自分の隣に置かれた座布団をポンポンと叩いた。


「確かに私は、お前達からしたらそういう立場の者かもしれんが、気にするな。」
「しかし・・・。」

「そうされるのが嫌いなんじゃ、のう、広重(笑)」

「そうっすね。姉貴も祇儀の兄貴もそうされるのが嫌いなのわかります。分け隔てないっていうか、同等に接したいっていうか・・・。」

「まあそういうことじゃ、だからほれ(笑)」

そういうと、砂靭は凛香の横に、遊佐は椿の横に座った。