「兄貴・・・お嬢・・・」

横になっている緑涼と椿の姿を見るなり、言葉を失っていく空我。その横で治療を終えた凛香が「大丈夫じゃ。」と言うと、空我の肩をポンポンと叩いた。
「空我。」
禮漸が燃え残った紙を持ってリビングへと入ってきた。空我は、その紙を禮漸から静かに受け取るとその紙に書かれた自分の名前を見つめる。

「・・・許せねぇ・・・」

そういうと、空我はその紙を一瞬で握りつぶす。眼は血走り、身体は小刻みに震えている。
「今、伝書鳩郵便に役所の奴らが聞き込みに行っておる。それに、ここに来る前に清澄や私達の所にも同じような荷物が送られてのう。」
それを聞いた禮漸は「で、荷物は・・・?」と凛香に聞いた。
「拒否した。清澄が不審に思って“受け取らないほうがいい”と連絡をくれてのう。」
「そうですか・・・。」
「さっき、蓮流から状況を聞いたのじゃが“白いふわふわした丸い物”がいたと。」
「あぁ。いきなり笑い出したと思うと急にすっと消えて・・・。」
禮漸からそれを聞いた凛香は、何かを確信したのか徐に携帯を取り出し、電話をし始めた。


プルルル・・・

「は~い。凛香~(泣)」
「はいはい(呆)そっちは、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。清澄がね、差出人が誰かわかったみたい。」
「私もじゃ。おそらく、同じだと思うが・・・。」
「とりあえず、こっちで探してる。ところで、そっちはどう?」
「緑涼と椿が怪我してる。椿は気を失っておって、緑涼は軽い脳震盪起こしておる。」
「そっか・・・」
「すまん・・・これは私のせいだ。清澄にもみんなにも、こんな事・・・」
「凛香・・・ちょっと待って!」
「奥方様。これは、私にも責任がございます。自分ばかりを責めないでください。」
「清澄・・・。」
「とにかく、私達もそちらに向かっておりますので、そのまま動かないでください。いいですか、絶対に!」
「判っておる。待っておるぞ。」

凛香は、静かに携帯を切ると大きな声で「すまん!」といきなり謝り始めるのであった。