千夏のことは、高校に入学する前から知っていた。
同学年のバスケ選手として、有名だから。
千夏は小6のときのミニバス全国大会と、中学2.3年のときに全中全国大会に出場している。
何度か対戦をしたことがあるが、実力差は歴然だった。

高校の部活の日、バスケ部新入部員の中に千夏の姿を見つけて驚いたし、嬉しかった。
でも、彼女がプレーヤーではなくマネージャー希望と知り、また驚いた。
理由を聞いたら、最後の全国大会で膝の怪我が原因で、もう選手としてプレーすることはないと言っていたけど…
今日のプレーを見たら、十分出来そうだけどな。

薫が濡らしたタオルを持ってきて、千夏の膝を冷やしている。
私は2人に近づいた。
「千夏。大丈夫?」
「うん。でも、ごめん。
次の試合は無理」
「分かってる」