空いた皿を二人分、黙って持っていかれたのち、さらさらと水の流れる音がする。


立ち上がる隙を失った瑛人は、ひとつだけ余っていた胡瓜を口にいれて、その後を追いかけた。



じいちゃんは気まぐれに家事をする。


分担と言ってしまえばそれまでなのだが、とにかく何も言わずにやっているのだ。洗濯も風呂洗いも。


それはそれで困りものだけれども瑛人が住み始めた頃と比べれば、瑛人は特に気にもしなかった。


あの頃は、家のものを触ることをやんわりと拒まれていた。


家庭の都合上、彼がある程度の家事をすることは知っていたのだろうが、孫に何かをさせるということに抵抗があったのかもしれない。



瑛人は後ろから漬物皿を流し台に置くと、その人はぼそりと呟いた。



「墓参り、よろしくな。ついでにお前の母さんのことも」



自分の娘のことなのに、墓参りのついでに名も呼ばずに頼まれてしまったーーそれがおかしくて「分かったよ」という返事が少し震えた。