マンションに戻ってさっそく、雅史少年と姉の麻美が尋ねてくる。
「あ?」
「弟からあなたに助けて貰ったと聞いて、その……」
もじもじと話す女に泉は軽く苛つき口の中で舌打ちする。
なんだってこいつを連れてきたんだと少年を睨みつけた。
他の奴はもとより、家族にも自分のことは話すなと口止めしておいたはずだ。
どうしてもとしつこくせがまれて白状してしまったそうだがそんなことは知ったこっちゃない。
「よ、良ければお礼に食事でも──」
「女に興味はない」
再び返された言葉に二人は呆然とした。
やっぱりこの人はアレなのか?
アレなんだろうかと心中で何度も反芻する。



