「あ、ありがとう」

「今から言うとこに来いよ。あん? 拉致監禁と麻薬密売だ」

 それだけ言うと通話を切り、シャッターの開閉ボタンを探す。

「あ、あの。警察の人ですか?」

「そう見えるか?」

 ぶっきらぼうに応えて壁に設置されているボタンを押した。

 シャッターは大きなきしみをあげて上昇し、外の光を倉庫内に迎える。

 太陽は先ほど確認した時よりも少し傾き、腕時計の表示は十四時二十分を示していた。

「名前教えていただけませんか?」

「嫌だね」

 終始ムスッと返すが、女性の目はキラキラと泉を見上げて気にする様子もない。

 彼女にとっては、ピンチに現れた白馬の王子様よろしく彼が輝いて見えるのかもしれない。