「衣袋先生だっけ?ピッタリな名前だよねー」


失礼なことを言う杏だが、確かに、胃袋デカそうかもと私も失礼なことを思った。


1年6組の担任は、衣袋先生という、ぽっちゃりした男の先生だった。


漢字は違うが、ヨミは"イブクロ"。

おいしそうに御飯を食べている姿が目に浮かぶ。


優しい目をした、のんびりした雰囲気の先生だった。


遅刻したことを謝った私達を特に怒ることもなく、

理由が寝坊だと知ると「そうかあ、春だもんなー」と、あっさり許してくれた。

勿論、明日からは遅刻しないようにと言われたが。



「なんか、今日はいい出会いばっかだったなあ」



しみじみと私が言う。杏も頷いた。


かっこいい先輩。
優しい先生。


何より杏に会えたのが最高だ。



「遅刻して良かったかも」
「アハハ、アタシもー」



私達はふたり、笑い合ったのだった。