立ち上がった香織は、地面にボールを跳ねさせて、
「わかってたんだよ。諦めもついてた。
でも、幸せそうな修太郎みたら悔しくなったんだ。
泣いたらスッキリしたよ。
ありがとう。」
そう言って、コートの中心に向かって歩きだした。
最後の笑顔はホントの笑顔だったな。
俺は結局、何も言えないまま、テニスコートを出た。
変に慰めの言葉なんて必要なかったのかも。
「うま・・・」
お昼休み、いつものように空いている理科室に来て、葵のお弁当を食べる。
今日の卵焼きすげー。
「だし巻きにしてみたんだよ。」
得意げに言う葵、かわいー。
いつもみたいに幸せな毎日がやってきて
あ、俺って恵まれてるなって思う。
たった、二人としか付き合ってないけど、言葉にすることがどれだけ大事かがよくわかった。
「今日、練習見に来る?」
卵焼き飲み込んでから言うと葵は
「えっいいの?」
って嬉しそうな顔。
喜んでくれるなんて思ってもみなかったから、自然と笑顔になる俺。
「うん。あ、でも俺今日キャプテンに怒られる。。。」
「そうなんだ。怒られてる修ちゃんもみたいかも」
そう言いながらくすくす笑う葵。
「怒られたら慰めてくれる?」
拗ねたフリして葵を見ると。
「うん。はい。あーん」
口に入れられたのは葵のお弁当箱に入っていた卵焼き。
この笑顔とこのお弁当があれば、俺は絶好調なんだ。
単純だと思うけど。
FIN,

