虹恋〜儚い恋と虹色の涙〜

重たいキャリーケースを片手に、扉を開ける。いつもなら「は〜い」とおばあちゃんが来るはずなんだけど…


「あぁ、今日はばあさん、古谷さん家に行って仕事しとるよ」


「赤ちゃん取り出してるの?」


「そうだぁ。昨日、母体の様子がおかしいつって、寛治から電話かかってきたんだ。まだ予定日までには1ヶ月早いから、医者と一緒に取り出すってばあさん言ってたよ」


「ふ〜ん…」


おばあちゃんは、現役の助産師さんだ。村に1人しかいないらしく、おじいちゃん曰く「この村にいる若者は全員、おばあちゃんが取り上げた」らしい。


「いつ帰ってくるか分からないの?」


「んだ。ばあさん帰ってきたら、肉じゃが作ってもらえな」


「うん」


「鈴、これ持って」


「はーい」


お母さんから荷物を受け取り、靴を脱ぐ。長い廊下を歩いて、一番端の部屋に荷物を置く。


障子を開けて空気の入れ替えをする。部屋から見える庭には、青紫色の桔梗の花が植えられていた。


「あら、今年も咲いたのね、桔梗」


「綺麗だね」


ゆっくりとお母さんが部屋に入ってくる。