そうして、隆一の電話を待っていたが、一分とたたずに苛立ち始める充。
足を荒々しく揺すり、指の関節をコキコキと鳴らしだした。
「お! 電話が来た。コイツも貧乏だったらどうしようかと思ったぜ! もしもし? 隆一君だね?」
隆一が電話を掛けなかった理由、それはサイトの中でメールを打っていたから。
強制的に退会になるまえに、最愛の人に言葉を残していたのだ。
今は無理でも、いつか見てくれるかも知れない。
隆一は泣きながら文章を作った。
その文章は余りにも切なく胸を打った。
当然だろう。隆一の悲しみが込められた文章なのだから。
その愛情が深い程に悲しみも深くなるのだ。
隆一は充よりも年下だが、精神の成熟度合いは遥かに上だった。
人間の精神的な成長に年齢は関係ない。
技能も年齢は関係ない。
15最でオリンピック出場確実の人もいれば、
一生出場できない人もいるのだから。
「はい。隆一です。本名は龍二です。充さんの本名は?」
龍二は長い沈黙の後にようやく答えた。
「あっそ。龍二か。俺は充。本名だ」
当然のように苛立ち怒っていた。
火と水。どちらが火であり、水であるかは説明も不要だろう。

