「大丈夫か龍二!」
充は全身を貫く寒気を必死に堪えながら、叫ぶ。
「ハァハァ……充さん気をつけて下さい。クソ!」
「龍二! タメ口でいいどうした?」
充はそれしか聞かない。
龍二はどうして走っているのか。
それは後ろに謎の男がいるからだ。
足音もたてずにシュンと音をならすだけで移動する存在。
その男には足が無かった。
「分かった。充! 俺の事は忘れろ。俺は死ぬだろう。謎のアバには近づくな。林檎ちゃんも諦め……ぐ……」
龍二の言葉が途切れた。ギャリギャリと変な音が聞こえた。
「龍二どうした!」
先ほどから全く同じ言葉を発した充。
心配そうな表情だけはわかる。
「ニガサナイ。オマエは嫌いなコエだ。必ずコロス」
まるで電子音のような声が聞こえると、龍二の電話が切れた。
「何なんだよ一体……」
充はまだ自分の置かれた状況を把握していないらしい。
龍二は自分の背後に立つ存在の危険さを瞬時に判断していたのだ。
敏感な龍二は全身の筋肉を爆発させて、自室の扉を蹴り破り外に出た。
そして家の外に逃れ、そして捕まりこの世と別れた。

