「ヒロ兄のこともあって、やっぱり怖いっていうか……。もう私のこと好きじゃないのかなって思い出したら不安になっちゃって」
それが積もりに積もって、あの日に我慢できなくなっちゃったんだ
あのときに私が我慢していれば、こんなに苦しむこともなかったはずなのに……
「めい、今あんた自分が我慢していればって思ったでしょ」
"分かりやすすぎるから"と呆れたように梨花が言った
「あのまま我慢してたっていつかは限界きてたんだから。遅かれ早かれ辛くなるのは一緒でしょ?」
…………何も言えない
梨花に言われるまで気づかないなんて、私は正真正銘のばかだ
「棗の本当の気持ちが知りたい……っ」
うっすらと浮かぶ涙のせいで目の前がぼやける
心の一番奥にあるのは、棗と仲直りがしたい、棗の気持ちを知りたいっていうこと
それに入江くんのことや牧野さんのことが絡んでいて、頭の中で整理がつかなくなっちゃった……
「私ね、棗が誰といようと、誰を好きだろうと棗のことが好きってことに変わりはないの」
これだけは、距離を置いている今でも胸を張って言える
「ならやることなんて一つじゃない。めいは分かってるのに、怖くて逃げてるだけ。それじゃ何も変わんないよ」
梨花の力強い言葉が私の背中を押してくれる
「別に夏目君と別れたからといって一人になるわけじゃないでしょ!私がいるんだから!」
当たって砕けろ!なんて梨花らしくない男勝りなことをいうから思わず笑ってしまった
「ふふっ、そうだよね。私には梨花がいるもんね?」