もうすぐ花火が上がるというアナウンスすらも耳を通り抜けるくらいの緊張感が私たちの間に漂っている



そして、入江くんは拳をグッと握って私を見た


「俺………上原さんのことす」



"ドーーーーーン"



入江くんが何かを言いかけた瞬間、花火が夜空に打ち上げられた


「綺麗………」


そう口に出してしまうほど、雲ひとつない空に咲く花は綺麗だった


入江くんと向き合っていた顔は自然と空を見上げ、一年に一度の花火に見惚れてしまう



大きいものから小さいものまでたくさんの花火が上がり、最後にひとつ、今までで一番大きな花火が上がって花火大会は終わった





「うわぁ……すっごく綺麗だった……ね」



覚めやらない興奮のまま入江くんを見ると、そこから目が離せなくなってしまった


「う、うん。そうだね」という、なぜか少し焦ったような入江くんの言葉も気にならないくらい、私の意識は入江くんの先に集中していた




私の見間違いかもしれない………



そんなありもしない希望を信じて、一度目をそらしてからもう一度目を向ける



けれどそこには依然として目を背けたくなる現実があった




…………やっぱり、見間違いなんかじゃなかったんだ



私が見つめるその先には、




「ちょっと棗くん!待ってよ〜」





………女の子と一緒に歩く棗がいた