彼は、そんな私の執事。


 役に立つ、優しい執事。



 ま、特にインパクトはないけどね。



 あんまりイケメンじゃないし。



 こんなこと本人には言えないけどね。



「実はわたくし、この度お嬢様の執事をやめることとなりました。
長い間、ありがとうございました」



「え?」



 いきなりすぎじゃない?



「理由、聞いても良いかしら?」


「わたくしの実家は長年続く茶道の家元でございまして。
わたくしの父が、家元を継いでいたのですが、この間父が急に倒れまして。
家元を継げるのはわたくししかいなくなってしまったのです。

急で申し訳ありません、お嬢様」



 まぁ・・・しょうがないかな。



「わかったわ。
やめるのを認めますね。

大変だと思うけど、頑張って。
今まで、私に仕えてくれてありがとう」


「こちらこそ、ありがとうございました。
お嬢様、お元気で」




 そして私は、生まれた時から私に仕えてくれた彼と、お別れをした。