思わず声に出してしまい、発した言葉を戻しでもするように男は慌てて口を抑えた。

じっと身動きせずに、誰も起きていないことを確かめる。

じめっとした夏の夜の沈黙に、乾いた時計の音が響いた。



誰かが起きてくる気配は、ない。



ふうと安堵の息をつく。

もうこの家を出ようと、窓に向かった。


すると、





「…うおおおー」


「!?」





唐突に聞こえた奇声に、男は飛び上がらんばかりに驚いた。

がばっと後ろを振り返るが、誰もいない。

怪訝そうに眉を潜めた。

しかし、少し部屋の東側に行けば声の主はすぐに見つけることができた。


この部屋で寝ていた男の子だ。





「…うおおおりゃあー」





男の子の、寝言だった。

それに気付いた男は、小さく舌打ちをしてまた窓へ向かう。