キスに秘められた大粒の涙

「じゃあ、また後で！！」


そう言って、席に戻っていく彩那の姿を見送っていると…

暫くしてからチャイムが鳴った。


ガラリと勢いよく教室の扉を開けて、中に入ってくる担任の椎名先生。


椎名憂樹 (ｼｲﾅ ﾕｳｷ)

25歳。

若いを武器に、尚且つ歳も近いから
生徒ともよく話が合う。

黒縁眼鏡がチャームポイント。


若干なお下げだけど…
女子生徒の印象も高いらしい。


彼女いないみたいで、早く作りなよ！！

って、男子生徒から葛が入るくらい
甘く見られてる。


冗談ノリツッコミも程ほどにね。


椎名先生。



一瞬で教室内の空気が、一気に重くなった。


「これからHRを始めるぞー
皆席に着け！！
おい、日向
日向の席の回りにある、パンの袋とかちゃんと拾えよ
全く…日向は散らかして、何やってる」


「すいません、先生
今拾って捨てます」


「よし、それで良いだろ
で、今日は皆に紹介したい人がいる」


「もしかして転校生ですか？」


「その人は、女ですか？
男ですか？」


質問攻めをするクラスメイトの女子達。

目をキラキラと輝かせ、いかにも興味津々の模様。


私は、私は分かってる。
だけど…
次第に胸が苦しくなるのは何故だろう。


さっきまで重たかった教室の空気は…
一段と明るくなり、いつもの賑やかを取り戻した。


「おいおい、そんなに一気に聞くなよ
お前らが好きな男だぞ」


「きゃー、やったー」


「先生、かっこいいですか？」


もちろんかっこいいよ。

このクラスメイトの女子達が、全員虜になるくらい。