「……壱、ダメよ女の子の顔にそんな顔を近づけたら……」
奈々さんも飽きれたように言う。
「え、だって……見えないし?」
「コンタクト買うか眼鏡付けろよ!それになんで疑問形なんだよ……」
なんだろ……このボケとツッコミみたいなこの感じ。
「……ふふっ……」
自然と笑みが溢れた。
嫌いなはずの所だけど、ここは暖かくて居心地が良くて安心してしまう。
「……良かった……」
笑う私を見て颯兄がそう呟いていたことを私は知らない。
「笑った方が可愛いじゃん。笑ってなよ、小難しい顔してたっていい事ないし」
目を細めて笑う壱哉さんは、颯兄と同じ大きな手で私の頭を撫でてくれた。
言ってるセリフは、なんか漫画とかで出てきそうだけど。
「お前、そのセリフ……」
微妙な顔をした颯兄は溜め息を吐いていた。
「うん、拾った漫画にあったくさいセリフ」
自分で言うんだ……そう言う事……。
なんか、少し泣きそうになった自分がバカみたい。
「……壱哉が適任かもな……」
「……は?」
颯兄の突然の言葉に首をまた傾げる壱哉さん。
「壱哉、ここにいて。話聞け。瑚琴、話して欲しい……黒豹と出会ったこと、……諒に、黒野諒にされたこと」
「…………う、うん……」
私の前に真剣な顔をした颯兄と奈々さん。
そして私の隣にやっぱり怠そうな壱哉さん。

