美雨ちゃんのお兄ちゃんとは、なんと生徒会のあの副会長だった。

美雨ちゃんの話によると、副会長は妹である美雨ちゃんをたいそう溺愛していて大変だとか。

そのシスコンな副会長が大橋陽菜ちゃんに頼んで、私に美雨ちゃんを近づけないようにしていたらしい。

なんでそこまで嫌われているのだろうか私は。男みたいなのに女だからかね?まぁ別にいいけど。

それよりも驚いたのは、いつの間にか女嫌いな副会長と主人公である大橋陽菜ちゃんが仲良くなっていたことだ。

いつのまに……主人公すげーな


「……まぁ、そんな感じでお兄ちゃんがえらく亮たんのこと嫌ってたからどうしたのかなーって思ってたのだよ。あ!やばい。陽菜ちんが戻ってきたっ!今話してたことは陽菜ちんには内緒ね!!お兄ちゃんに伝わるとめんどくさいから。じゃあねー!!カレー作り頑張ろーぜっ!!!」


カレー作り……カレー作り!!

美雨ちゃんの最後の一言で思い出した。カレー作りどうしよう!


私の班は、なっちゃんと鈴木くんと文沢くんと美雨ちゃんと陽菜ちゃんと私を含めた6人だ。

鈴木くんも実は攻略対象で、クラスでは王子様的存在である。

なっちゃんと鈴木くん。この2人の攻略対象と、主人公の陽菜ちゃんがいる班だから、なにか恋愛イベントが起こるんじゃないかと楽しみにしていた。

が、問題は係だ。
係は話し合いで私と鈴木くんと陽菜ちゃんが火を起こす係りで、他の3人が料理係となった。

なんで私が火を起こす係りになったかって?それはまぁ、料理ができないから……できないというよりは、ちょーっとドジをよくしてしまうだけで、いや、もう、なっちゃんに料理係を全力で止められたんです。はい。

えーと、火を起こす係りと言っても、この係のメインの仕事は薪集めだ。

薪集めの際は山の中で集めるので、はぐれない様に3人一緒に行動することが絶対である。

つ・ま・り、イベントが起きるかもしれない2人にとって私は完全なる邪魔者!!!!!

うわぁ、普通ならなっちゃんと鈴木くんと陽菜ちゃんという3人でやるやつだったんだろうなぁ。

陽菜ちゃんごめんよ。



「あ、亮様起きたのですね。よく眠れましたか?」

私の周りに座っていた女の子たちが店から戻ってきたようだ。
買ってきたお菓子を渡してくれる。ありがとうとお礼を言って受け取ったが、なんか餌付けされている気分だ。


「うん。あ、この毛布、誰が掛けてくれたのかな?」

「……私」

とても可愛らしい、小さな、だけどよく通る声。
その声にとても合った、小さくて思わず抱きしめたくなるような女の子がちょこんと横に座っていた。

あれ?いつのまに??

「えっと、毛布を貸してくれてありがとう。はい。」

たたんだ毛布を女の子に差し出す。

「………っ!!」

「わっ」

その子はバッと私から毛布を奪うと、前の方の席へと向かって走り去ってしまった。

え、私なんかした!?

よくわからないまま、バスはサービスエリアを出発したのだった。