アクスはすぐさま間合いととり直し、鮮やかに半身を返して、

「これならどうだ!」

と再び力強い一撃を仕掛ける。

確実に死角を狙った一撃。

「!!なに!!」

しかしそれも、瞬時に形成される土の防御壁を貫くことはできなかった。

定石通りのアクスの動きにゴーグは翻弄され、度々隙をつくってはアクスにとって有利な間合いに踏み込ませてしまっているのだ。が――

それにもかかわらずゴーグはいつまでたっても無傷だった。

アクスがどんなに最適な間合いから最良の攻撃を繰り出しても、土と砂の強固で変幻自在な盾がゴーグを守ってしまうからだった。

アクスの胸を焦りが満たし始める。

―あのシールドをなんとかしなければ…!

突然、アクスの胸を針で刺されたような鋭い痛みが走った。

「うっ……」

アクスは思わず口元を押さえ、しゃがみこむ。その手が鮮血で真っ赤に染まる。

―くそっ、こんな時に、病が…

いくら巨体でのろいゴーグと言えど、この隙を見逃すはずがなかった。アクスは気がつくとゴーグの拳で脇腹を強打され吹き飛ばされていた。

ガシャンと激しい音が鳴りアクスはつぶれた果物の海の中にいた。アクスは自分が生きていることを確かめるように呼吸をした。打たれた脇腹がひどく痛むが、生きている。

―果物がクッションになってくれなければ今頃自分は死んでいただろう。

しかしあばらの二三本は折れてしまったのか、アクスは起き上がれない。

そんなアクスに黒い影がさす。

「暴れる食いもんはこうするのがいいど」

ゴーグは太い腕でアクスの首をつかんで全身を持ち上げると、そのまま首をへし折ろうとした。