今日から私は琴宮荘で、神様のお手伝いをすることになった。
契約してしまったものは仕方ないし、それに、よくよく考えたら、神様や妖怪なんかにあえる機会はそうそうない。
これは小説のねたになるかもしれない。

「美波。今日はいろいろあって疲れただろうし、手伝いは大丈夫だから部屋で休んでいてよ」

荷解きをしていた私の部屋へ、柳彦がエプロン姿で入ってきた。
その姿は、なんというかお母さんみたいだった。

「私も手伝います!大変でしょ?」

そう、今から食事の支度をするらしいのだが、ここ[琴宮荘]には80人近くの住人がいるのだ。
一人で80人分の食事を作るなんて、気が遠くなりそうだ。

「大丈夫だよ。今まではずっと一人でやってたんだし、今日はゆっくりしてて。それより、美波はなにが食べたい?」

「えっと、じゃあお言葉に甘えて……。なにが作れるの?」

「んー、大体何でも作れるよ。もう68年生きてるし」

柳彦は、17歳の時に神様と契約したらしい。
もうそれから51年経つって言ってたけど、姿は17歳の時から変わっていないみたい。
本人はちょっとづつだけど変わってるよ!たぶん……。と言っている。

「それじゃあ、柳彦の得意料理がいいな」

「分かった!任せて!」

柳彦は私の返事を聞くと、笑顔で去っていった。