「ねぇ、そうなんだよねぇぇぇぇえ?」


「ち、違うって言ってるだろ………!」




沖本君の顔色は、みるみるうちに悪くなってゆく。


声だって裏返っている。




「そういう、動揺した返事をするってことはぁ、


やっぱり愛里が沖本君に何が吹き込んだのねぇぇえ?」


「違うって…」


「違わないんだよ!!」




だって、そうに決まっているもん。


私の恋した沖本君は、そんな酷い人じゃないんだもん。




「ねぇえ、沖本くぅううぅん?」




ずいっと、私は沖本君に顔を近づける。




「ヒイッ!!」




沖本君は何故か怖がった表情で、汗だくにして、私を見る。


きっと、愛里に変な命令されて、だからそんな表情で、


そんなに汗をかいているんだ。




「沖本くぅうん…」


「う、うわああああ!!!」




そう叫ぶと、沖本君は走ってどこかへ行ってしまった。


まるで、この世に存在しないような、恐ろしい化け物から逃げるようにして。