最初で最後の口づけ

-放課後-




帰りに、沖本君を見かけた。


隣に、愛里はいなかった。


愛里は、手芸部の活動があったのだろうか。




私は、無意識に沖本君の後をつけていた。




あまり歩かない道。


あまり乗らない電車。


あまり行かない場所。




沖本君は、こんな道を通っているんだあ……。




ちょっと、沖本君のことを知れて、嬉しいかも。




しばらくすると、沖本君はとある家の前で足を止めた。


私は近くの電柱に身を隠す。


その家の表札には"沖本"という文字が書かれている。


どうやら、この家は沖本君の家のようだ。




ここが、沖本君の家……。




大きくて、黒い屋根で、和風で、書道教室なんかやってそうな感じで、


風流な家だなぁ……。