しばらく、ずっと泣いていた。




気が付くと、目の前には小さな木があった。




周りの気よりも一際小さくって、地味で、目立たなくって、


だけど、見たことのある気だった……。




これは……。




「あの桜の木…?」




そう、これは沖本君が大事に世話していた桜の木だ……。




私はその木の幹に抱きしめるように触れる。




「………うっ、うっうぅ………」




そして、また泣き出す。




情けない声が響く。


辺りに誰もいなくて、本当に良かった。


こんな情けないところを見られたら、恥ずかしくて死んでしまいそうだ。




そう思ったときだった。




誰かの足音が聞こえる。




咄嗟に、私はその小さな桜の木の隣にある、大きな桜の木に身を隠した。