最初で最後の口づけ

しばらく、気まずい空気になった。


沈黙が続いてゆく。




「それはそうと、雅は好きな人いるのっ?」


「いるよ、それは知っているよね?」




思わず、愛里に冷たく言ってしまう。




「ご、ごめんねっ!


で、好きな人って……誰………?」




愛里が、また首を傾げて、自慢の髪の毛をふわっとさせる。




いつもなら、「綺麗な髪だな」「お人形さんみたい」と思うけれど、


今の私には苛立ちしか感じさせなかった。




「うっさいわね、いつもいつもいつも!!!」


「みや……び…?」




愛里は、びっくりしているようすだった。


私だって、愛里に怒鳴りつけたくなんかない。


でも、愛里の髪の毛がふわふわと動くたび、苛立ちが募ってゆく。




「いつも、私に好きな人いるの、好きな人誰なのって…。


いい加減、鬱陶しいのよ!!


私の好きな人?知ってどうするの?何するっていうの!?


知って、だから何なの!?」