最初で最後の口づけ

行き先は教室なんかではなく、女子トイレだった。


誰もいない女子トイレからは、廊下で遊んでいる人達の笑い声しか聞こえない。




一番奥の個室に入って鍵を閉めた瞬間、私は声を殺して泣いた。




「ぅ………うぅ………」




僅かな嗚咽と、鼻を啜る音だけが漏れる。




絶対に、私の方が先に沖本君のことを好きになったのに。


沖本君のことを、秘密に愛していたのに。


密かに、沖本君に恋していたのに。


誰にも言わなかった願いなのに。




愛里は、いつも私に恋話を持ち掛けてきた。




もし、あの時に、私が沖本君のことが好きなんだって、


そう言ったら、少しは違う未来が待っていたのかな……?


そうしたら、愛里と沖本君は、付き合うことなんかなかったのかな……?




過去への後悔と、愛里への嫉妬心が渦巻く。




涙は、止まらない。


永遠に、流れ続けるようだった。