「お、藤枝です!俺、駅前の喫茶店で土日だけバイトしてるんだけど。

ポ、ポップコーンとコーラの礼に、コ、コーヒーご馳走したいから、来てくれませんか?あ、コーヒー苦手なら、パフェとかあるんで!」


映画なんか上の空で、必死に考えたセリフだった。




スプリング ハズ カム!
いや、サマーか。


その週の土曜の朝、マリエさんは、本当に俺のバイト先の喫茶店「ロミオ」に来てくれた。


清楚なベージュのワンピースに細い黒のベルト。

スレンダーなプロポーション、大人の着こなし。

極め付けは、白いハイヒール。


そんな彼女がメニュウも開かずオーダーしたのは、アールグレイで。


「ご馳走するんだから、ロイヤルミルクティーぐらいにすればいいじゃん」


俺の不満そうな言い方にも、マリエさんは、ウフフと笑うだけ。


可愛いな。抱きしめたくなるよ。
マリエさんに、いいところ見せたい。


「いい雰囲気のお店ね」


カールした長い睫毛が瞬くたびに、小さな星を撒き散らすかのよう。

その輝く瞳が、俺を骨抜きにするんだ。