あれから特に症状もなく、やはりただの過呼吸だったのだと安心しきっていたがその時は突然やってきた。

体育でバスケットボールをしていた時、またあの苦しさが起こった。
「うぅ...」
「宮野!」
先生に運ばれ保健室に行ったが、前回とは違い苦しさが治らず救急車を使い病院に搬送させられた。

目が覚めた時は病院のベッドで両親の泣き声が聞こえてきた。
「娘が助かる方法はないんですか?」
「手術という手がありますが、リスクも大きくあまりお勧めできません。」
手術。
そんなに酷い病気なのか本人はにはようわからないが、未だに苦しさが続いていた。
「手術以外にはないんですか?」
「内科治療で薬を使いながらという策もありますが、必ず治るという保証もありません。」
お母さんが泣き崩れるのがわかる。
紗羅はそのまま意識を手放した。

翌日起きた時に誰もいない真っ白な部屋で紗羅は目を覚ました。
相変わらず胸の苦しが残っていた。
「目が覚めたか?」
声のする方を向くとそこには意外な人が立っていた。
「あの時の...」
「あの時?覚えはないが。」
とあっさり言われた。
確かにメガネをかけていてすこしわかりずらいが確かにあの文化祭に来ていたあの人に違いない。
「長瀬...浩智...さ...ん。」
「...」
浩智は眉間に皺を寄せてすこし睨むようにしたがようやく気付いたらしく
「ああ、財布を届けてきたやつか。」
と言ってきた。
初対面の仮にも患者であるあいてに"やつ"とは失礼ではないかと思いもしたが反論する余裕もないぐらい具合が悪くそれどころではなかった。
「結論から言うぞ。」
といきなり本題に切り出された。
「お前は心臓病を患ってる。」
その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
自分が心臓病?
今まで凄く健康体だったというわけではないが、大きな病気も怪我もしたことがなかった。
なのにいきなり心臓病だとか言われても頭がついてこなかった。
「昨日、お前の両親にも話したが、手術を希望してるみたいだったぞ。お前はどうしたい?」
どうしたい?そんなのと言われてもわかるはずもない。
いきなりあなたは心臓病です。
はいそうですか、とはならないはずだ。
頭がついてこずただ浩智の話を聞くしかなかった。
「どう...って...。」
「手術するにしても、本人の許可が必要だ。嫌なら薬でなんとかするしかない。」
「薬で治るんですか?」
「保証はできない。」
どこか苦しそうな顔をする浩智の顔をみて、ああ本当に自分は心臓病なんだと痛感した。
生理的にきた涙が頬を伝う。
どちらも嫌だった。
手術など尚更である。
もし失敗すらば命を落としかねない。
そんなことをわかっていながら決断できるわけがなかったのだ。
まだ15年しか生きてない。
やりたいことが山ほどある。
やっと本当の友達といえる人たちができた。
なのにこんな仕打ちはあんまりではないか。
紗羅は静かに涙を流していた。