あの日あの時...あの場所で








「瑠樹、大丈夫?」


「あの女に何かされたの?」

顔を青ざめさせたい桃子と、怒り心頭の梅が到着したのは、彼女が沢山あるハンガーラックの中へと紛れた後。


「二人とも落ち着いてよ。何もなかったわ」


「本当に何もされてない?」


「うん、梅、大丈夫よ。水着の事を話しかけられただけ」


「それだけ?」

桃子が首を傾げた。


「うん、そう。この水着良いな?って見てたらね」

と手に持ってた水着を二人の目の前に出した。



「あ、ほんと、これ良いね」

桃子が笑顔になる。


「でも良かった。何もなくて。誰かと一緒に居る所を見て焦ったわよ」

梅はふっと表情を緩めた。



「ごめん。二人とも心配かけて。走ってきてくれたんでしょ?」

必死な顔で駆け付けてくれた二人。


「良いのよ、瑠樹が無事なら」

「そうそう、梅の言う通り」

二人が笑ってくれるから、胸があたたかくなる。


三人がね、友達になってくれ本当に良かったと思うよ。



「心配してくれて、ありがとう」

心からの言葉を伝えたくなった。


「心配するのは、友達なんだから当たり前でしょ」

梅が笑う。


「そうそう、当たり前」

桃子も笑ってくれる。




「じゃ、三人の水着が決まった所で、森岡君達の所へ行きましょうか?」

「えっ?梅達ももう決まったの?」

驚いた私に二人は手に持ってた水着を掲げて見せた。


梅は黒の光沢のあるシンプルなビキニで、桃子は名前の通り愛らしい大きなリボンが胸元についてる桃色のビキニ。


とても二人によく似合いそうだ。


「「この通り」」

「フフフ...ハモってるし」

「さ、行きましょう」

梅の言葉に私と桃子は頷いて歩き出す。



豪達の待つ長椅子の元へと急いだ。








「あ、瑠樹さん」

ハンガーラックの途切れた辺りで声をかけられた。


豪の待つ場所までは数メートルの距離、それを目隠しするように立つのは夏樹。


「...夏樹、どうしたの?」

少し感じた違和感。


「いえ、そろそろかと思いまして、お待ちしてました」

と優しく微笑んでくれる。


「わざわざ、ありがとう」


「いいえ。先に会計を済ませましょうか。皆さんも行きましょう」

私の肩を両手で掴んだ夏樹は回れ右をさせる手、梅達にも声をかけた。


この時、三人がアイコンタクトを取っていた事を私は知らない。