「上等だ、刺されても構わねぇよ」
俺はニヤリと口角を上げると、テーブルの上に在った煙草を手に取って火を着けた。
立ち昇る紫煙、ゆらりと螺旋を描いていく。
「もっと生に執着してくれよ」
呆れたように言われた。
「生きる事に意味が見いだせねぇ」
と言い捨てる。
あいつを手放してから、俺は生に執着しなくなった。
だからと言って自殺なんてのは考えたことはねぇ。
そんな狡い逃げを選びたくはねぇからな。
俺は自然の摂理のままに淘汰されることを望んでいるから。
「キングの瞳に光を戻してくれる奴が現れねぇかな?」
圭吾が苦笑いを浮かべる。
「そいつにはもう会えねぇよ」
自嘲的に眉を歪めると、ゆらりと揺れる紫煙を目で追った。
だから、美夜が俺の言葉に悲しげに顔を歪めたことなんて知らねぇ。
「その意味深な言葉、気になるけど教えてくれないんだろ?どうせ聞いても」
溜め息交じりにそんな事を言う圭吾を、
「さあな?」
とはぐらかす。
聞かれても...教えたくねぇ。
あいつとの思い出は俺の中で綺麗なモノであって欲しいから。
「ま、もういいや。それはそうと面白い話があるんだけど」
俺の中に無理矢理踏み入ってこようとしない圭吾は楽で良い。
「んだよ?随分と楽しそうじゃねぇかよ」
こいつが悪戯っ子みたいな顔してる時は何かの遊びを思い付いた時だ。
「南との境にある複合スーパーいかね?」
「買い物かよ?」
くだらねぇ。
「違う違う。南の狼王が噂の女と出没してるって情報が入ってきたんだよ」
「狼王か?」
そう言えば、あの女嫌いな狼王が一人の女を大切に囲ってるって噂が流れてきたな。
唯一無二の存在が出来た狼王。
あの堅物がデレデレに甘やかしてるって噂だ。
「面白そうじゃねぇ?狼王が囲う女を見たくね?」
「噂じゃ、美少女だって言うしね?私も行きた~い」
圭吾の言葉にハイハ~イと手を上げた。
「美夜もこう言ってるし、行こうぜ?」
「良いだろう。狼王の弱点でも見に行くか?」
本命の女何て弱点以外の何者でもねぇ。
それを隠すこと無く側に置いてる狼王の本気を確かめに行こうか。
そして、それが所詮は幻影なのだと思い返すために.....。



