シャワー室を出て元居た部屋へと戻れば、女の姿は既に無かった。
それが暗黙の条件だから。
俺がシャワーを終わらせる間に支度をしてこの部屋から出ていく、それが俺とセックスを楽しむ条件。
いつからそうなったのか、もう忘れちまったが、都合が良いので変えるつもりはねぇ。
欲を吐き出した後まで女の顔は見たくねぇ。
頭にタオルを乗せてガシガシと吹きながら、部屋を横切ってドアを開けた。
その途端に聞こえてきたのは笑い声。
「アハハ...さっきの女の顔、傑作だったね」
ケラケラ笑うこの女は、俺の唯一のセックスフレンド。
中三の頃に俺がこっちに引っ越してきて以来の仲だ。
恋愛感情はまったくねぇ。
他の一夜限りの女達より面倒臭くねぇってだけ。
自分の立場をわきまえ、俺にセックス以外を求めない。
だから、こいつの側は楽だ。
こいつが初めての女だと言う情みたいなのがねぇとは言い切れねぇが、こいつを好きになることは永遠にねぇ。
いや、こいつ以外も.....俺の心の中を支配するのは、今も昔もあいつだけだ。
未練たらしい女々しい男だと言われても、こればかりはどうにも出来ねぇ。
声を上げて笑う女と、俺の側近が座るソファーへと歩み寄る。
「美夜(ミヤ)今日はもうヤらねぇぞ?」
そう言いながら一人掛けのソファーにドカッと座る。
「分かってる。それよりさっきの女に何したのよ?物凄い顔で出ていったわよ?」
そう言いながらもクスクス笑う美夜。
「知るか」
そう答えると濡れたままの頭をタオルでガシガシとする。
青木美夜(アオキミヤ)、茶髪のショートヘアー、愛嬌のある猫目、その左側の目の下に色気のある泣き黒子がある女。
俺に一番近い女だと噂されてる。
本当は他の女と大差ねぇ。
違うのは一夜限りじゃねぇってことだけ。
こいつとは体の相性が良いから、ずるずるヤってるだけだ。
面倒臭せぇ事も言わねぇしな?
「プンプン怒ってたわよ」
「知るかよ、別にかまわねぇよ」
一夜限り女が怒ってようとな?
「いつか刺されるぞ?」
そう言いながらも笑ってるのは、小西圭吾(コニシケイゴ)、茶髪に前髪に白メッシュ、童顔で女に可愛いと持て囃されてる。
だけど、こいつが一番残忍で怖い男だと言うことを俺は知ってる。
童顔の下に隠した狂気をいつももて余してるんだ。



