「ほんと、あの子遅いわね?」
腕時計を見て不機嫌に眉を寄せるのは梅。
約束の時間からすでに10分経っていた。
「電話したけど、出ないよ?」
スマホ片手に申し訳なさそうにこちらを見る桃子。
楓ってば、本当に遅れてるし。
「良いわ。もう行きましょう。私達だけじゃなくて、今日は森岡君達も居るんだし」
私にそう言った梅は、私の側に居る豪達に目を向けた。
「行くぞ」
私の手を引いて歩き出す豪。
「えっ?本当に行っちゃうの?」
楓可哀想じゃないかな?
「良いのよ。忠告したのに遅刻した楓が悪いわ。さ、桃子も行きましょう」
梅は私に微笑むと、桃子を手招きした。
「は~い、今回は楓が悪いしね」
手に持っていたスマホを鞄にしまうと桃子も笑顔で駆けてくる。
「では、行きましょうか?ギャラリーをこれ以上増やすのは面倒です」
夏樹の言う通り、夏樹達目当ての女の子がわんさの人垣を作ってた。
「バイバ~イ、子猫ちゃん達」
キャーキャー騒ぐ女の子達に、ひらひら手を振って夏樹の隣を歩き出す大翔
まったくいつも軽いのよ。
動き出した私達を追い掛けようと付いてくるギャラリーの皆さんがとんでもなくウザい。
豪なんて苛々しずきて眉間のシワが濃くなったし。
豪達とこんな目立つ所で待ち合わせは...今後しちゃいけないと悟った。
「他人の迷惑も考えずについてくるなんて、大馬鹿な真似をしないでもらえますか?」
振り向いて冷たい視線を向けたのは夏樹。
女の子達は、夏樹の放つ殺気にビクッと体を揺らしてその場に立ち止まる。
「お、静かになったな?これでええわ。さすが、夏樹やな?」
大翔も笑っていない瞳を怯える女の子達へと送って、夏樹の肩をポンと叩いた。
「瑠樹はいつもこんな視線に包まれてるのね?苦労するわね」
豪と手を繋ぐ私の隣で、梅は心底迷惑そうな顔をして散らばっていく女の子達を見ていた。
「慣れたらどうってことないけどね。ごめんね、嫌な思いさせちゃって」
桃子や梅にはしなくてもいい嫌な思いさせちゃったし。
「謝らないでよ。森岡君と出掛ける約束に私達が割り込んだんじゃないのよ。瑠樹が謝ることなんて何一つないわよ」
梅は涼しげにそんなことを言ってくれる。
「そうだよ、瑠樹。私も梅もこんな可愛い私服姿の瑠樹を見ることが出来て嬉しいくらいだし」
桃子も梅の隣から顔を出してフフフと笑う。
この子達は、本当に良い子なんだと改めて思う。



