あの日あの時...あの場所で






「今日は車なの?」

と乗り込んでから聞くのも可笑しいけどさ。


「ああ、電車よりは危なくねぇし」

同じ様に後部座席に座る豪が答えてくれる。


いやいや...電車の何が危ないの?


「痴漢が出るし、何かあった時に箱ものは動きが取れねぇ」

私の顔つきから何かを悟ったらしい豪がそう付け加えた。


「ああ、なるほどね?」

説明されたら納得できる。

だけど、日本に来て初めて電車に乗るから、少しだけ期待してたんだけどな。


「また、混み合ってねぇ時に乗れば良い」

豪は何でも分かっちゃうんだね?


「うん、そうする」

だから、素直に頷けるんだ。



ってか、この車はどこの?


マンションの正面玄関にドドーンと横付けされてる黒くて大きな高級車はなに?

手袋をはめた運転手さんが運転してるし。


ハイヤーとか言うのを雇ったのかね?


高級感たっぷりな車だから 値段も高そうだよね。



「これはうちの親父の車、で運転してるのはうちの運転手」

不思議そうに車を見渡してた私に豪が説明してくれる。


「えっ?豪の家はお金持ちなの?」

と驚いた私に、

「瑠樹んちほどでもねぇけどな?それなりにな。っうか聞いてね?親父が理事長だって」

「あ..そう言えば聞いたような」

ちぃ君に教えてもらった気もする。


「ま、他にも小せぇ会社もやってるけどな」

「へぇ、そっかぁ。高級車に乗れていいね」

「そうでもねぇだろ?っか瑠樹んちの車もこんなもんだろうが」


そっかぁ.....言われてみれば、パパに使うように言われてる車もこんな感じだったな。


「あ、うん、そうかも」

フフフと笑えば、

「お前って、興味のねぇ事に無関心そうだもんな」

と苦笑いされた。


それは言えてる。


興味の無いことは、正直どうでも良いし。




「二人は?」

夏樹とか大翔とか。

一緒に行くんだと思ってた。


「あいつらは、バイクで待ち合わせ場所に行ってるはずだ」


「へぇ、バイクかぁ、良いな」

と言ったら、


「今度乗せてやるから、今日は乗りたいとか駄々こねんなよ」

と見透かされた。



「は~い」

フフフ、本当、豪って咲留みたいだし。


「本当に分かってんのかよ?」

軽い返事した私に呆れた様な溜め息をついた。


分かってるし。


せっかくの楽しいお出掛けに、無理難題は言いませんよ。