う~ん、どうしようか?


顎に手を当てて考える。


目的の倉庫はそこなのに、足留めをされてる私。


まさか、あんなに倉庫前にたむろしてるなんて思わなかったんだよね。
 
護身術は習ってるので、いざとなったら戦う事も出来るけどさ。


きょうは悲しいことに、膝上10センチのフレアスカート。


オーバーパンツも履いてないので、暴れる訳にもいかないしね。


いやいや、その前に暴れちゃいけないよね?



さてはて?どうしようかね。





「ねぇねぇ、か~のじょ?どうしたの?」

背後から聞こえた軽い声と、肩に乗った手。



ギョッとして振り返ると、そこのは茶髪のチャラい人がいて。


なっ、な、な、なんだ、この人。



「うわぉ!超可愛いぃ~!」

おい、叫ぶな。



眉間にシワを寄せて肩に乗る手を払い落とす。


「触らないで。」

口調がキツくなるのは仕方ないよね?


この人、ウザいし。


ほら、こいつのせいで倉庫前に溜まってた連中もこっちを見たじゃないのよ。


視線痛いし、怖いし。


咲留ぅ~、助けてぇ。



目が潤んでくる。




「か、可愛い。超可愛い」

抱きつく勢いで迫ってくる男に後ずさる。



「...キモい。近寄るな」

本音が漏れる。


「毒舌?可愛い顔して毒舌なの?」

なに?この人、Mなの?


ニコニコ喜んでるんですけど。



嫌だ、この人。


顔は良いけど変態なんだもん。



「やだぁ~咲留~!」

そう叫びながら、伸びてきたチャラ男の手をむんずと掴んで倒れ込んで来た所を、足払いを掛けて横転させた。


「...へっ?....うわ.....っ...」

ドシンと背中から落ちた彼は苦しげに息を詰まらせた。


ざわめいていたはずの空気がシーンと静まり返る。



うん、やっちゃったな?

えへっ?





「庄谷さん!」

誰かが叫ぶ。


「健(タケル)さんがやられたぞ?」


あ、この倒れてる人は庄谷健(ショウヤタケル)と言うらしい。



どうでも良いけど、ヤンキー達があたふたし始めた。




「つか、あの子さっき咲留さんの名前呼んでなかったか?」

誰かが言った。


うんうん、咲留を呼んで。



誰が倉庫に向かって走っていく。



ってか、ゾロゾロとこっちに歩いてくるのは止めて!


正直、強面の顔の人に囲まれるのとかヤだし。


側に立ててあったキャリーバッグの取っ手をギュッと掴む。


危なくなったら走って逃げれるように。