あの日あの時...あの場所で






中学生になったばかりの豪が、生意気だと高校生にリンチされてる時に咲留が助けてくれたらしい。


その時に見た圧倒的な強さに惚れて、咲留に喧嘩を教えてもらったみたい。


暫くして、咲留が兄の千景の仲間だと知って更に憧れたようだ。


延々と咲留の良さを教えてくれようとする豪を、

「もうトイレの前だから」

と諌めたのは言うまでもない。


普段言葉数が少ないくせに、咲留の事になると饒舌になる豪は面白いと思う。





「行ってくるから、下駄箱で待っててよ」

すぐそこだしね。


「一人で大丈夫か?」


「当たり前でしょ。ここで待たれてる方が大丈夫じゃないし」

トイレの前で豪に待たれてるのは流石に恥ずかしい。


 
「分かった。何かあれば叫べ」


「了解」

トイレで何があるって言うのよ。


ズボンのポケットに片手を突っ込んで、もう片方の手で二人分の鞄を持って気だるそうに歩いていく豪を見送ってからトイレへと足を踏み入れた。



心配性な所も咲留をリスペクトしなくていいっての。


だけど、初めて会ったばかりの豪に私がすぐに馴染めたのは、豪が咲留をリスペクトしてくれてたからだと思う。


豪と居ると咲留と居るみたいで、凄く楽チンなんだよね。


咲留に良く似てる豪が、私は結構好きだ。


もちろん、友達としてだけどね?



フフフと微笑んでからトイレの個室へとは入った。