あの日あの時...あの場所で











「...あの子よね?あの子のせいでしょ?」

佐奈はヒステリックに叫ぶ。


「佐奈落ち着け。誰のせいでもねぇ。俺が昔も今もお前に気持ちがねぇだけだ」

佐奈の肩をガシッと掴む。


「...違う。あの瑠樹って女のせいよね」

そう言った佐奈の瞳は憎悪に歪んでる。


こいつをこのまま野放しにしたら瑠樹が危ない。

そんな予感がした。


「瑠樹は何にも関係ねぇよ。あいつを巻き込むな」

「そんな風に庇うなんて大切にしてる証拠じゃない」

「瑠樹は俺達にとって特別なんだ。兄貴も咲留さんもみんなが大切にしてる存在なんだよ」

瑠樹はなにがあっても守るべき存在なんだ。



「なんなのよ、それ!あんな女居なくなれば良いのよ」

嫉妬にまみれた顔で叫んだ佐奈。

中三の別れ際にも、佐奈はこんな風にヒステリックになってたよな?

俺はヒートアップする佐奈を自棄に冷静に見つめていた。



「あんたは昔も今も変わってないんやな?なんでも人のせいや。あほらしい、さっさと帰るで豪」

軽蔑したように佐奈を睨んだ大翔は俺の腕を引っ張る。


「大翔の言う通りですね。時間の無駄です。行きましょう」

夏樹はそう言うと眼鏡を押し上げて校門の向こうに停まる車へと歩き出した。

それに合わせて俺の腕を引いて大翔も歩き出す。



「ちょ、ちょっと待って、豪」

佐奈の声に振り返ろうとした俺は、


「豪、気持ちのない優しさは罪やで」

と大翔に言われて、振り向かずに車を目指した。


大翔の言う通り、ここで佐奈を突き放さないといけないと思ったんだ。



だから、俺達は知るよしもなかった。

佐奈が憎悪に満ちた瞳で俺達を睨み付けながら、瑠樹への嫌がらせを思い巡らせてた事を。



嫌な予感がしていたはずなのに、俺は佐奈を放置してしまった。


それが瑠樹に降りかかってしまうのに.....。

そしてそれが、俺達の距離を更に遠ざけてしまう事になるんだ。



俺がそれに気がついて後悔した時には、全てが掌からこぼれ落ちた後だった。








豪side.end
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄