あの日あの時...あの場所で











「そうそう、そんな猫撫で声で言われたら鳥肌もんやし」

大翔も明らかな拒絶を示す。

女好きで、女の子には優しい大翔なのに、なぜか昔から佐奈を嫌ってる。

俺のせいで負った怪我を理由に佐奈は自分が引っ越すまで俺を彼氏として縛り付けたのが原因だと思うけどな。




「豪、夏樹君も大翔も冷た~い」

俺の腕を掴んだまま上目使いに見上げる佐奈。


昔はこんな仕草も可愛いと思えたのに、今は何とも思わねぇ。


だけど、こいつをあんまり突き放せねぇのは、こいつが俺のせいで左足に怪我を負ってしまったからだ。

またまたデートで側に居た俺の喧嘩に巻き込まれて佐奈はアキレス腱を切った。

今は治ってるはずだけど、あの頃陸上選手だった佐奈には致命的だったんだ。


適当な付き合いをして、怪我をさせたのは俺の責任。

だけど、適当な付き合いでもう佐奈を自分の事情に巻き込みたくねぇと日に日に思うようになった。


佐奈に気持ちが無い事を自覚したのに、別れたくても別れられないで居た俺。

そんな矢先に佐奈の父親の転勤で、佐奈達家族は引っ越すことになった。

俺はこれ幸いと別れを切り出した。

中学生の遠距離なんて無理だと佐奈も納得したはずだったのに、まさか戻ってくるなんてな。


昔のガキだった自分が招いた失態だ。

マジで面倒臭ぇな。


あ~もう、佐奈よりも俺は瑠樹が心配で仕方ねぇってのに。






「佐奈、わりいが昔みたいにお前の側にはいらんねぇ。だから、お前は俺じゃねぇやつを探せ。俺なんかより自分を愛してくれるやつを見つけた方が良い」

無表情のまま佐奈を見下ろして、絡み付いていた腕をほどいた。


冷たく突き放すようだけど、佐奈が側に居ても俺はなにもしてやれねぇし。

これが佐奈の為だと思うんだ。



「...っ..豪、どうして?私、ずっと豪と会う為に頑張ってきたのに...」

ショックを受けたように瞳を潤ませる佐奈。

胸が痛まない訳じゃないけど、今ここで優しさを見せても意味ねぇもんな。



「昔のよしみで困ったことは助けてやる。でも、それ以上はなにも出来ねぇ。俺のテリトリーにお前を連れてく事もな」

夜叉の巣窟に連れてけるのは、瑠樹だけだ。


「そ、そんな...私、大好きな陸上も失ったのに...また豪も失うの?」

そんな悲壮な顔すんなよ。

陸上が好きで生き生きしてた佐奈を変えたのは...俺。

それが分かっててもどうしようもねぇんだよ。


今更.....。