「瑠樹、もう一度俺を見てくれ。昔みてぇに。俺からお前を遠ざけといて今更なのは分かってる。だけど、瑠樹と再会して瑠樹を愛してるってことを嫌ってほど思い知った」

柊は真剣な表情で私を見つめる。


「...っ..」

余りにも熱の籠った視線に何も言えなくなる。



「お前に顔向けの出来ねぇ事もやって来た俺を直ぐに信じてくれなんて言わねぇ。だけど、チャンスぐらいはくれよ。それに、お前を悲しませてる狼王に瑠樹を渡したくはけぇんだ。だから、暫く俺の側に居てくれ」

そう懇願する柊には、キングと呼ばれてる気高さなんて何処にもなくて。

私と目の前に居るのは昔から知ってる柊だった。


浮かんでくるあの頃の思い出。

辛い事も沢山有ったけど、柊と二人で支え合ってたよね?


胸が熱くなった。

懐かしい日々が甦る。


私は柊と居た方が良いのかも知れない。

そうすれば、豪だって、私なんかのお世話をしなくて良くなるしね?

そうすれば、彼女と元に戻れるもんね。


ズクズク痛む胸には気付かない振りをした。


















柊に連れられて帰ってきたのは、西の街の高層マンション。

最上階のペントハウスが柊の住まいだった。


ヤクザの組長であるお父さんからのプレゼントらしい。

柊に大学を卒業するまでの自由な時間を与える用意したそうだ。


大学を卒業と同時に組に戻り本格的に若頭としての修行をする約束になっているんだと柊が教えてくれた。




「凄く広いね?」

窓側のガラス張りの壁が、広い空間をより広く感じさせた。


窓の外の眺望を望むように白い革の二組のソファーが透明のオーバルのテーブルを囲むように配置されていて。

壁際には大きな50インチのテレビと、オーディオセット。

高い天井にはキラキラしてるシャンデリアがぶら下がってた。




柊に案内されてリビングに足を踏み入れた私は部屋を見渡して溜め息をついた。



「無駄に広いだけだ。俺の部屋はそのドア。瑠樹は隣の客間を使えばいい。あっちのドアがバスルーム、その横がトイレ。で、そこが衣装部屋みててなもん。キッチンも好きに使ってくれていい」

後ろからやって来た柊が私の背後に立って説明してくれた。


「う、うん。分かった」

ぎこちなく頷いた私の肩にポンと手を置いて、


「それと、掃除は三日に一度ハウスキーパーが入るからやらなくていい。食材は適当に組の者が補充してく。足りねぇもんや欲しいものはその都度言ってくれ」

と追加事項を教えてくれる。



うん...ま、色々凄いことだけは間違いない。